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或る風景 (2)

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今夜は、後輩の雪乃が頑張って予約してくれた赤坂のイタリアン。奮発した赤も、柔らかい牛ヒレも、お店の雰囲気も、みんな良かった。「この次は、あすこにしようね」雪乃にそう言って、美保子はバイバイと手を振り、駅へ向かった。



部屋へ帰る電車の中、美保子の目の前は座れそうで座れない席。酔いツブれたおやぢサラリーマン氏、2人分のスペース使ってるよ。後ろの窓に持たれかかった脂ぎった顔。口元はだらしなく開き、涎が垂れかけている。緩めたネクタイは結び目のところなのだろう、黒く変色している。ツンツルテンのスーツと靴はどう見ても安物だ。おやぢ氏、携帯電話を握り締めてる。あーあ、いびきまで始まっちゃった。

・・・ヤだなあ。汚いなあ。



ブルブルブル・・・あ、アタシだ。美保子は電話に出る。アイツだ。
「ごめん、今電車だから」
「うん、明日ね。9時に来てね!嬉しいよぉ」
「うん・・・んもぅ、バカねぇ(笑) んじゃーねっ」
パカッと携帯電話を折りたたみ、あらためておやぢ氏を見やる。

・・・アイツもいつか、こうなるのかな。



おやぢ氏の携帯にフと目が止まる。子供の笑顔の、写真が貼ってある。

・・・あんた、家族の為に頑張ってるんだね。
・・・その安そうなスーツも靴もネクタイも、きっと、だからそうなんだね。
・・・あんた、おしゃれなとこ食べに行かなくても、気の利いたとこ出かけなくってもいいんだね。
・・・帰ったらきっと、その子が寝てるのをそっと見届けるんだね。

あんたは、ちゃんと歳をとってるね。
アタシは違う・・・ただ老いてってるだけかもだ。



その頃、いたずら坊主のような笑顔で、助手席のグローブボックスにアイツが星のような指輪を忍ばせてる事を、美保子は知らない。

2005.04.16 | | Comments(0) | Trackback(0) | 創 作

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