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或る風景 (3)

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特段何の用事もない土曜日。Yは、横になってTVのデイゲームの野球中継を、見ることもなく見ていた。台所から、妻が息子を叱る声と、その合間に自分に向かって話すのが聞こえて来る。けれどYは、最近自分と会おうとしない優子の事とか、仕事の事とかを考えつつ、ちょっと空耳で相槌を打っていた。

「あたしサ、前にイギリス行ったじゃん」
「あぁ」
「あれでサ、献血しちゃいけないってなったみたいなのよ」
「へぇ、どして」
「どうしてかしらね、でも1980年以降イギリス滞在が1日でもあったら、ダメなんだーって言ってたよ」
「あー、そうなのか」
お、打った打った!これで同点だ!偉いぞー。
「あたしサ、自分が役に立つって事なかなかないからサ」
「え、あ、うん」
よし!きわどいけどボールだ。良く見たぞ。
「何かこう、やっぱりあたしは駄目なんだーって思っちゃった」
よし!フォアボール。1・3塁。チャンスは続いてる。
「いや、そんな事ないだろうよ」

日曜日、朝寝坊したYは、高学年になってクラブ活動を始めた息子のための買い物をする妻と横浜駅で待ち合わせた。家を出るのがちょっと早かったな。待合せのお昼迄、1時間弱ある。

どうするかなー。駅の外を何気なく見回したYの目の前では、献血車と、献血にご協力をお願いしまーす!と大きな声で呼びかける青年が何人か居た。


献血って注射だろ?痛いだろうな、面倒くさいな。
けどあいつ、昨日はしょげてたなあ。
よく覚えてないけど、月に何度かの献血する日は、とても嬉しそうにしてたもんなあ。

・・・これからは俺が代わりに、献血しようじゃないか。痛いのなんて一瞬じゃないか。


あいつには黙っていよう。そう思いながら、Yは献血車に向かって歩き出した。

2005.06.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 創 作

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