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或る風景 (4)

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金曜の朝、5時。ぶ厚い革ジャンを着てアパートの階段を降り、いつものオートバイに跨った。イグニッションキーを捻ると、一部をメッキされたサイドカバーで覆われたキャブレターから送り込まれた混合気が、プラグの放電とともに水冷ツインカム4気筒エンジンを力強く胎動させ、その爆発はヨシムラの集合管から野太い音を解き放つ。ヘルメットはアライのラパイドと昔から決めている。あご紐を締め、グラブをはめ、まだ明けきらない街へ走り出す。なめらかなエッジの多角形をした赤いガソリンタンクの上面には、右にオフセットされた航空機タイプのガソリンキャップがあり、その左には夜明け前の空が映り込んでいる。丸目単眼のヘッドライトが前方を照射し、その反射光が砲弾型の2連メーターを縁取る。59馬力の400ccエンジンは、左足をかきあげるたびに非日常へとスピードを上げる。

信号待ち。左車線に、スーッと黒いセダンが止まる。視線を感じてチラと見ると、こっちを見てニヤニヤしている。車高の低さとメッキの多さで、歓迎したくない人種だと感じ取る。
青。猛然とダッシュする。脳が後ろに持ってかれる錯覚を覚える。白いタコメータの中で赤い針が12,000rpmへと瞬時に飛び、シフトアップ。右ミラーを見る。小さく映っているが、もう何の事はない。バイバイ。

1時間と少し走って、到着。少し街を離れた、高台。

「お前が被ると、首がいっそう細く見える。頭が、重そうだ」
そう笑われたな。ふと思い出しながらエンジンを止め、藤浦雪乃はヘルメットを取る。もう4年になる。

あれ。花が供えてある。誰?分からない。まあいい。
次郎のお墓の前で、雪乃は静かにひざまづき、手を合わせる。


じろー?


---様々な、郷愁と悔恨が入り混じった気持ちが、湧き上がって来る。


最近ね。色んな事、思い出せなくなってる。
あんなにたくさん、あったのに。

・・・ごめん。


また、来る。
そう心で呟き、静かに立ち上がる。駐車場へ戻ると、深緑色の大きなセダンの傍らに河相が立っていた。

「藤浦さん」
「ごめんなさい。今は、」


ありがとうだなんて、心でしか言えない。雪乃はバンディット400に跨り、ヘルメットを被ると一礼をして、国道へ走り出た。

2005.11.23 | | Comments(0) | Trackback(0) | 創 作

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